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講義名 服装史論
(副題)
講義開講時期 前期 講義区分 講義
基準単位数 2
校地 2学年
必修・選択 選択
講義名(英文) Fashion History and Theory
学部・学科 大学院生活環境学研究科被服環境学専攻(博士後期課程)


授業概要 / Class Description ヨーロッパ中世および近代の中世趣味を対象とし、服飾表象を分析するための資料・方法・課題を検討する。中世は、社会生活において服飾の象徴的役割が特に大きかった時代である。その象徴性を儀式儀礼、色彩感情、文様の意想の三つの視点で、文学作品や会計記録などの文書と写本挿絵などの図像を通して明らかにする。一方19世紀に近代産業社会を迎えたとき、それに対抗するかたちで中世復古趣味が生まれ、それはロマン主義芸術を特徴付けたばかりか、若者たちに中世風ファッションの流行を促した。ロマン主義の美術・文学・演劇・服飾の相関を示し、近代の服飾表象の特質を明らかにする。授業の最後に、履修者が各自の研究課題について問題設定と資料分析について発表する機会を設け、服飾文化研究の多様性を考える。
到達目標 / Goal 服飾文化の史的事象の調査について、史料と方法、またテーマの展開の可能性を、中世および近代の中世趣味を事例に理解する。その上で、自身のテーマの研究方法と比較し、自らの調査を客観視できるようになる。
授業計画 / Class schedule
内容
第1回序・心性史としての服飾史:19世紀以来の西洋服飾史研究を概説し、時代の感性・心性を解くための新たな服飾表象論について解説する。
第2回中世服飾のシンボリズム(1)封建儀礼:封建制度に関わる儀礼にシンボリックな身振りや服飾の伴うことを述べ、衣服の社会的象徴性を論じる。
第3回中世服飾のシンボリズム(2)愛の儀礼:袖をめぐる習慣(袖を縫う)や儀礼(袖を贈る)を事例とし、中世の恋愛思想を考える。
第4回中世服飾のシンボリズム(3)変容の儀礼:王の聖別式や入信の儀式などの儀礼における服飾の意味について述べ、中世の服飾表象の特質を論じる。
第5回色彩感情と色彩論(1)排除と蔑視の黄色と縞柄:今日まで残るヨーロッパ独特の感情をもつ色と文様について、特に嫌悪された黄色と縞柄を取り上げる。
第6回色彩感情と色彩論(2)緑と自然感情:ヨーロッパの季節感が生み出した緑色に対する正負の感情について述べる。
第7回色彩感情と色彩論(3)黒の発見と黒服の系譜:中世末期に流行色となった黒が、その後プロテスタントの倫理からブルジョア倫理まで、どのような思想の影響下で服の色として定着したのかを述べる。
第8回文様の意想(1)紋章とドゥヴィーズ:中世服飾文様のソースとなった遊戯的な紋章(ドゥヴィーズ)について、図柄のバリエーションとその取材源を示す。
第9回文様の意想(2)涙滴文の表象と文学的抒情性:中世末期のメランコリックな時代感情のなかで流行した涙模様について、その背景に文学趣味のあったことを述べる。
第10回文様の意想(3)『動物誌』と動物表象:動物文のドゥヴィーズは、古代の博物誌を継承し、中世に多くのヴァージョンを生んだ動物誌に取材されることが多い。動物誌を通して動物文の意想を考える。
第11回近代におけるレトロ・ファッション(1)発端と様相発端と様相:1830年代のパリで、アーチストから若者へ波及した中世風ファッションについて、その具体像と芸術、また風俗の背景を示す。
第12回近代におけるレトロ・ファッション(2)仮装舞踏会と舞台衣裳:懐古ファッションの背景にある、カーニヴァルの仮装舞踏会の隆盛、およびロマン主義の演劇思潮について述べる。
第13回近代におけるレトロ・ファッション(3)演劇・美術・文学・服飾の相関:ロマン主義の特徴が演劇・美術・文学の総合芸術にあることは既に指摘されているが、ここに服飾を加えることによりロマン主義がより立体的に捉えられることを論じる。
第14回服飾文化研究の方法と課題(1):受講者の研究テーマについて、これまでの成果について発表し、今後の展開を討論をする。
第15回服飾文化研究の方法と課題(2):受講者の研究テーマや本講のテーマを通して、服飾研究の方法および課題を検討・討論する。
評価方法 / Evaluation 評価方法:A(S)~C・E。
評価の基準:授業への取り組み度(50%)と期末レポート(50%)により総合的に評価する。
教科書等 / Textbook 指定なし
準備学習 / Preliminary study 自身の研究テーマと調査の方法を改めて整理し、授業内容と比較できるようにしておく。
担当教員問合せ先 / Office to contact 服装史学研究室(A067)